見えない炎上の正体
セキオ、日本で実際にあった情報操作の例ってどんなのがあるの?
代表的なのは、2020年の「検察庁法改正案に抗議します」騒動だよ。芸能人や有名人が一斉に抗議の声を上げてハッシュタグがトレンド入りしたけど、その背後には、海外のボットやフェイクアカウントの関与が疑われている。
えっ、それって全部本物の人じゃなかったの?
一部はもちろん本物の声だけど、分析ツールを使うと、典型的なボットの挙動を示すアカウントが大量に拡散に関与してたことがわかる。特定の時刻に一斉投稿、言語や内容のテンプレ化、フォロワーが極端に少ないなどの特徴がある。
他にもあるの?
たとえば2023年から2024年にかけてのALPS処理水放出に関する情報もそう。SNS上で「危険」「汚染水」などの言葉がトレンド化して、国内外で不安が広がった。でも、専門家の意見よりも感情的な投稿が優先されて、事実と異なる印象が拡散されたんだ。
なんでそんなことが起きるの?
感情に訴える情報は拡散されやすいからだよ。「怒り」や「恐怖」は人間の本能に響く。しかも、それが既存メディアにも取り上げられると、一気に社会全体に広がってしまう。
それって「プロパガンダ・パイプライン」?
まさにその通り。SNSで炎上させた話題が、新聞やテレビのニュース番組に取り上げられると、もはや一個人の意見ではなく「公共の問題」に格上げされてしまう。そうなると、政治家も無視できなくなる。
じゃあ、誰が仕掛けてるの?
すべてが外国の勢力ってわけじゃない。でも、中国やロシアなどがSNS上での情報操作を展開していることは世界的にも報告されてる。最近は、「サイバー民兵」的な個人や団体が、自発的に動いているケースもある。
「サイバー民兵」って?
国家の指示がなくても、特定の思想や目的のために情報を操作する一般人や団体のことだよ。ある意味、純粋な愛国心や信念から動いているんだけど、結果的に世論を偏らせたり、分断を生んだりすることがある。
他にも、企業や学校、自治体にまで影響が出てるって話もあったよね?
そうだね。たとえば、ある企業が特定の国との関係をめぐってSNS上で批判され、その対応を誤ると炎上して業績に直結することがある。これは「企業炎上型情報操作」とも呼ばれている。背景には、ビジネスと地政学の結びつきがあるんだ。
学校とか自治体も?
もちろん。たとえば自治体が国際問題に関する発信を行った際、それが政治的に利用されるケースもある。また、学校現場では、特定の歴史認識や価値観をめぐるネット炎上が起き、生徒や保護者を巻き込む騒動になることもある。
情報の裏側って、思ってたより複雑なんだね。
その通り。次回は、民間ドメイン、つまり企業や学校、自治体といった領域での情報操作や影響工作について見ていこう。
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