日本国内のデジタル影響工作の実態に迫る
セキオ、日本でもデジタル影響工作が行われてるって本当なの?
ああ、間違いないよ。かつては「日本に情報戦なんて関係ない」と思われてたけど、もうそうは言えない時代になってる。
特にSNSの普及が、状況を一変させたんだ。
どういう風に変わったの?
例えば2020年の「検察庁法改正案に抗議します」ってハッシュタグが急拡散した事件。
その際には、ボットや海外アカウントの関与がかなりあったと分析されてる。
これは、政治に対してネット世論が現実の政策を左右する転換点だった。
なるほど、SNSの力ってすごいね。でもそれってどこから来てるの?
背景には、2011年ごろからのスマートフォンとSNSの急速な普及がある。インスタ、X(旧Twitter)、YouTube、TikTokが爆発的に広がって、情報の即時拡散が可能になった。加えて、選挙や政策に直接影響するケースも出てきたんだ。
じゃあ、影響工作って日本でも歴史があるの?
実はそうなんだ。戦前からのコミンテルンの活動や、ゾルゲ事件なんかも、影響工作のルーツと考えられている。
コミンテルンってなに?
コミンテルンは「共産主義インターナショナル」の略称で、ソ連が中心となって1920年代に設立された国際共産主義組織のことだよ。
各国に工作員を送り込み、現地の政治・労働運動に影響を与える活動をしていた。日本でも戦前に活動していて、思想やメディア、学術界への浸透があったとされているんだ。
そんなに前からあるんだ…!
そう。1970年代には政界や民間、学術界にまで浸透していたっていう指摘もあるよ。
最近の動きはどうなの?
2010年代後半以降、中国の「大外宣戦略」やロシアの情報戦術が日本にも波及している。最近では2024年の東京都知事選でもSNSを駆使した選挙戦術が注目された。候補者がYouTubeやTikTokを戦略的に使い、若者への浸透を狙った事例もある。
日本独自の特徴ってある?
あるよ。まず、日本語という言語バリアがあるから、外部勢力はプロクシ、つまり代理人を使う戦術をとるんだ。日本の記者やインフルエンサーが発信する形にすれば、より自然に見えるからね。
えっ、じゃあ僕たちが見てる情報の中には、外国から仕掛けられたものも混じってるかもしれないの?
その通り。しかもSNSだけじゃなく、新聞やテレビといった従来型メディアとの連携も利用されてる。SNSで話題になったことがテレビで報じられると、それが事実のように感じられる。
それが「プロパガンダ・パイプライン」ってやつ?
そうそう。プロパガンダ・パイプラインとは、ネット上で発信された情報、特に操作的な意図を持った情報が、SNSで拡散され、最終的には新聞やテレビといった信頼度の高いメディアに取り上げられる流れのことを指すんだ。一度その流れに乗ると、人々はそれを裏付けられた事実だと受け止めてしまいやすい。影響工作の成功例として注目されている構造だよ。
日本のメディアは大丈夫なの?
信頼度は高いけど、経営資源の減少や閲覧数重視の姿勢が、外部勢力につけ入るスキを与えている。報道内容が「借船出海(しゃくせんしゅっかい)」戦術によって歪められるリスクもあるんだ。
借船出海(しゃくせんしゅっかい)」って?
中国の情報戦略で使われる比喩的な表現だよ。
直訳すると「他人の船を借りて海に出る」という意味で、以下のような戦術を指すんだ。
たとえば?
たとえば、
自分ではなく、第三者を使って情報を発信する
外国メディアや有名人、現地のインフルエンサーなどを利用して、自国の主張やプロパガンダを自然な形で拡散させる
自国の関与を隠しながら影響力を広げる
というように、借船出海は、受け手に「中立的な第三者が言っていること」と思わせることで、信憑性を高め、反発を避ける効果があるんだ。
それってもう国家の安全保障の問題じゃない?
まさにその通りだよ。日本政府として対策をしていかなくてはならない問題になっているんだよ。
単なるSNSの投稿というだけではなくなっているんだね。
別の回では、実際にあった日本国内での事例、例えば検察庁法改正やALPS処理水放出をめぐるSNSの炎上、ボットの活動について詳しく解説しよう。
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